競馬の斤量とは?ハンデ戦と別定戦における斤量の決定方法とその影響を解説

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斤量とは?

斤量とは、競走馬がレースで背負う「負担重量」のことで、ジョッキーの体重や鞍などを含めた総重量を指します。単位はキログラムです。競走馬が背負う負担重量は、レースの条件や馬の年齢、性別などに基づいて決められています。例えば、「斤量58kg」と指定されている場合、競走馬は58kgの負担を背負わなければならず、それより軽いまたは重い重量ではいけません。

そのため、JRAではレースごとに定められた斤量が守られているかを確認するため、騎手が検量室で計量を行います。この計量には、レース前の「前検量」と、レース後に7位以内に入線した騎手や裁決委員が指定した騎手を対象とした「後検量」があります。後検量で計測された重量が前検量時の重量より1kg以上減っていた場合、その騎手は失格となります。

また、斤量は競馬予想において重要な要素でもあります。競馬新聞やJRA-VANのウェブ出馬表などには、騎手の名前の近くに「58.0」や「56.0」などの斤量が表示されています。レースを予想する際には、騎乗するジョッキーの名前とともに、その馬が背負う斤量を確認することが重要です。

レースにより斤量はどのように変わるの?

JRAでは、競走馬が背負う斤量はレースの種類によって異なり、レースの種類は以下の4つに分類されます。

・馬齢重量
・別定
・定量
・ハンデキャップ

それぞれの斤量ルールについて、簡潔に説明いたします(参考:JRA公式サイト)。

■馬齢重量

負担重量を馬の年齢によって定める方法は、主に2歳限定戦や3歳限定戦で適用されます。具体的には、牝馬は牡馬に対して次のような斤量差が設けられています:

  • 2歳9月までは牡馬と同じ斤量
  • 2歳10月~12月までは牡馬より1kg軽い斤量
  • 3歳以降は牡馬より2kg軽い斤量

このように、年齢や性別に基づいて斤量が調整され、競走馬の競走能力に応じた公平な競争が促進されます。

■別定

そのレースごとに負担重量を決定する基準が設けられているレースでは、まず基本となる重量(基礎重量)が定められ、これに過去の収得賞金額、勝利数、または特定の競走での勝利などによって斤量が増加します。この方式は重賞競走、特別競走、条件競走などで採用されています。例えば、「GIレース1着馬は2kg増」「収得賞金1200万円ごとに1kg増」といったように、各馬の実績に基づいて基礎重量に加算され、出走馬の斤量に差がつく仕組みです。また、基礎重量は原則として、2歳馬や3歳馬のレースでは馬齢重量に基づき、出走条件が3歳以上や4歳以上など異なる年齢層の馬が対戦するレースでは、5歳以上の牡馬・せん馬が平地競走で58kg、障害競走で60kg(牝馬は2kg減)となり、3歳馬や4歳馬は5歳以上の馬に対してレースの施行月や距離に応じて斤量が減量されます。

■定量

別定戦の一種で、収得賞金やGI・GIIレースなどの勝利実績に関係なく、馬の年齢や性別に基づいて出走馬全馬に一定の負担重量を定める方法です。3歳以上のGIレースでは定量戦が行われ、例えば日本ダービーでは牡馬が57kg、牝馬が55kg、有馬記念では3歳馬が56kg、4歳以上馬が58kg(牝馬はすべて2kg減)と規定されています。

■ハンデキャップ

出走馬の実績や最近の状態を考慮して、JRAのハンデキャップ作成委員が各馬の負担重量を決定します。ハンデキャップ作成委員の目的は、すべての出走馬が横一線でゴールできるようにすることであり、そのため実績のある馬や近走好成績を収めた馬には重い斤量が課され、逆に実績がない馬や近走低迷している馬には軽い斤量が与えられます。そのため、レースによっては最重量ハンデ馬と最軽量ハンデ馬との斤量差が10kg近くに及ぶこともあります。また、ハンデキャップレースでは、人気のない軽ハンデ馬が激走することがあるため、波乱が起こりやすいレースとされています。

斤量を採用することによるレースへの影響

競馬の世界では「斤量1 kg=1馬身(約0秒2)」という法則が広く認識されています。しかし、競馬はオープンコースで行われるため、レースのペースや展開など、さまざまな要因が結果に影響を与えます。そのため、斤量が1 kg軽くなったからといって必ずしも1馬身速くゴールできるわけではありません。それでも、「斤量1 kg=1馬身」の定説は古くから存在し、斤量差がレース結果に大きな影響を及ぼすことは確かだと見なされています。

例として、フランスの凱旋門賞を取り上げてみましょう。2000年以降、このレースでは3歳牡馬56kg(牝馬54.5kg)、4歳以上牡馬59.5kg(牝馬58kg)という斤量設定がされていました。この条件の下で行われた2000年~2016年の優勝馬は、3歳牡馬が8回、3歳牝馬が3回、4歳以上牡馬と牝馬がそれぞれ3回ずつ優勝しました。特に、最も斤量の重い4歳以上牡馬は2007年以降1着を果たしておらず、軽い斤量を背負った3歳馬が優勢でした。

これを受けて、2017年から3歳馬の斤量が0.5kg増量され、3歳牡馬は56.5kg(牝馬は55kg)となり、4歳以上の斤量はそのまま59.5kg(牝馬は58kg)に据え置かれました。この変更により、2019年~2021年には4歳以上牡馬が3連勝を達成しました。このように、斤量の変更が競走結果に与える影響を示す一例となっています。

また、国内のハンデキャップレースでも斤量差の影響を実感できます。たとえば、2022年のCBC賞では、今村聖奈騎手が最軽量ハンデ48kgのテイエムスパーダに騎乗し、最重量ハンデ57kgのタイセイビジョンに3馬身半差をつけて勝利しました。テイエムスパーダは格下の3勝クラスの馬でしたが、斤量差を活かして逆転した好例です。同年の北九州記念でも、軽量の51kgを背負ったボンボヤージが優勝し、57kgのタイセイビジョンは再び2着となりました。このレースでは、低評価のボンボヤージが斤量差を味方に激走し、大波乱を巻き起こしました。

これらの例からもわかるように、斤量差は時に実力差を覆すほどの影響を与えることがあります。競馬において、斤量差は非常に重要な要素であり、レース展開を大きく左右することがあるのです。

さて、馬券が当たった後の楽しみは何と言っても払い戻しです。インターネットで馬券を購入した場合、着順確定後に払い戻し金が自動で支払われますが、競馬場やウインズなどで実券を購入した場合は、馬券払い戻し機を利用して自ら払い戻しを受ける必要があります。

斤量から狙いを絞るには?

別定戦および定量戦における基礎重量は、前述の通り馬の年齢や性別によって定められており、基本的には牝馬が牡馬よりも軽い斤量、また3歳馬が4歳以上の古馬よりも軽い負担重量となります。そこで、今回は3歳馬と4歳以上の古馬が同じレースに出走する場合の成績の差に注目してみました。出走条件が「3歳以上」の別定・定量レースにおける傾向を、JRA-VAN DataLab.(データラボ)と競馬ソフト『TARGET frontier JV』を用いて調査しました。調査期間は2018年から2022年の5年間です。このデータを元に、年齢別による成績の差や、斤量が成績に与える影響について深掘りしてみます。

表に示された通り、3歳馬の成績は圧倒的に優れています。3歳馬が4歳以上の古馬と同じレースを走る時期は6月から12月で、ちょうど能力のピークを迎えつつある成長盛りの3歳馬が有利になるのは自然なことです。さらに、この時期に古馬よりも軽い斤量でレースを走れるため、斤量差が大きなアドバンテージとなり、成績に差が出る要因となっていることが分かります。斤量の軽さが、3歳馬が古馬に対して有利に働く重要な要素であると言えるでしょう。

2018年から2022年に実施された「3歳以上」の別定・定量レースにおいて、軽い斤量を背負う3歳馬が好成績を収めていることは明らかですが、重い斤量を背負った馬は成績が振るわないことも分かります。このデータを基に、6月から12月の「3歳以上」の別定・定量レースでは、軽い斤量を背負う3歳馬を積極的に狙うのが有効だと言えるでしょう。しかし、すべてのレースにおいて軽い斤量の馬を選べば必ず馬券が当たるかというと、残念ながらそうではありません。別定・定量レースでは軽い斤量の馬が好成績を収めていますが、ハンデキャップレースになるとその傾向は全く逆転します。つまり、ハンデキャップレースでは「斤量が重い馬ほど活躍する」ことが一般的です。

2018年から2022年に実施された平地競走のハンデ戦における斤量別成績を表にまとめました。

ご覧の通り、斤量が重くなるにつれて勝率、連対率、複勝率が上昇しています。

ハンデキャッパーは「全馬が横一線でゴールできるように」という想定で斤量を決定していますが、斤量差が大きければ大きいほど、馬の能力差も広がります。また、別定戦や定量戦とは異なり、斤量が軽い馬はその分実力が不足している場合が多いです。これにより、軽い斤量を背負った馬が好走するケースは少ないことがわかります。

2022年のCBC賞や北九州記念など、軽ハンデの馬が勝つと強い印象を残しがちですが、それが「ハンデ戦では軽ハンデの馬を狙うべきだ」と錯覚させる要因となります。しかし、実際には「ハンデ戦では重い斤量を背負った馬の方が成績が良い」という結果がデータから示されています。

では、軽ハンデ馬を全く無視して良いのかというと、競馬の面白さはその予測不可能性にあります。2022年のCBC賞や北九州記念のように軽ハンデ馬が勝つこともあるため、軽ハンデ馬にも注意が必要です。また、表に記載された単勝回収値(単回値)を見ると、斤量49.5kg~51kgの馬は「128」と突出した数値を記録しています。

単勝回収値とは、100円分の単勝を継続的に購入した場合の回収額を示します。斤量49.5kg~51kgの馬については、平均的に128円の払い戻しがあったことを意味します。つまり、この斤量帯の馬は「儲かる馬」とも言えます。勝率や連対率、複勝率は低いものの、ひとたび馬券に絡めば高配当が期待できることがわかります。

では、斤量49.5kg~51kgの馬をどのような条件で購入すれば良いのでしょうか。まず、2018年~2022年のハンデ戦において、斤量49.5kg~51kgの馬は合計40勝を挙げましたが、そのうち36勝が芝レースで、37勝が牝馬によるものだったという点に注目できます。この点は非常に重要なポイントです。

次に、脚質についても表にまとめてみました。1着回数だけを見ると「中団」が最も多いですが、勝率・連対率・複勝率に注目すると、「逃げ」がダントツの好成績を記録しています。斤量が軽いため、逃げ馬はスピードを維持しやすく、バテにくい傾向が見受けられます。

また、レース距離については芝1000m~1200m、枠番では1枠、7枠、8枠が好成績を収めていることがわかります。

これらの要素を総合的に考慮すると、ハンデ戦における斤量49.5kg~51kgの馬は、「芝1000m~1200m、牝馬、脚質は逃げ・先行、1・7・8枠」の組み合わせで好成績を収めやすいと言えます。

さらに、レース距離に関しても興味深いデータがあります。ハンデ戦の斤量49.5kg~51kgの馬は、芝3000m以上のレースで連対率、複勝率ともに芝1000m~1200mのレースを上回る成績を記録していました。3000m以上のハンデ戦は少ないため、2000年~2022年のデータに範囲を広げて調べたところ、結果は変わりませんでした。特に複勝率は、3000mで25.6%、3400mで24.1%と、他の距離を大きく上回る高い数字となりました。つまり、芝3000m以上のハンデ戦は少ないものの、もし斤量49.5kg~51kgの馬が出走していれば、十分に狙い目の候補となる可能性があります。

この章のまとめ

斤量(負担重量)はレース結果に大きな影響を与える要素であり、予想にも重要な役割を果たします。基本的には軽い斤量を背負う馬が有利とされていますが、ハンデキャップレースではこの傾向が逆転し、重い斤量を背負った馬ほど好成績を収めるという興味深いデータもあります。

さらに、レース条件や馬の年齢・性別に加えて、斤量に影響を与えるもう一つの要素として、見習い騎手や女性騎手の存在があります。これらの騎手が重賞を含む特別競走やハンデキャップ競走以外のレースに騎乗する際には、勝利回数に応じて負担重量が1kg~4kg減量される制度が適用されます。この点も覚えておくと良いでしょう。また、見習い騎手や女性騎手に減量制度が適用されているかどうかは、出馬表の騎手名や斤量の隣に「▲」「☆」「◇」などの記号で表示されます。

さらに、斤量に関する詳細なデータを調べるにはJRA-VANの利用をおすすめします。PCソフトのJRA-VAN NEXT(ネクスト)、スマートフォンアプリ、またはニッチなデータを見たい方にはJRA-VAN DataLab.(データラボ)が役立ちます。これらのツールを使えば、過去のレースデータ、出馬表、オッズ、調教データ、血統情報など、JRA公式の豊富なデータにアクセスできます。特に軽い斤量や重い斤量の好走パターン、ハンデ戦で強い騎手や厩舎についてさらに詳しく分析することができ、予想の精度を高めるための有力な情報源となります。まずはJRA-VANを覗いてみて、データを活用してみましょう!

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