競馬における血統~父の血と母の血が出会って名馬が生まれる
走破タイムや近走成績など、数ある予想ファクターの中でも根強い人気を誇るのが“血統”です。
競走馬は生き物であり、当然ながらすべての馬に父(種牡馬)と母(繁殖牝馬)がいます。そして、競走馬は一般的に種牡馬の特徴を色濃く受け継ぐといわれています。
「ロードカナロア(現役時に1200mのG1を5勝)の子は短距離に強い」
「ゴールドアリュール(ダートG1を4勝)の子はダートで好走する」
「モーリス(本格化は4歳以降)の子は晩成型かもしれない」
このような考えをもとに、多くのファンが予想を組み立て、馬券を購入しています。
ある繁殖牝馬の子が続けて成功するケースもあります。ヴィクトリアマイルや香港カップを制したノームコアと、宝塚記念を連覇したクロノジェネシスは、どちらも母クロノロジストの子です。また、菊花賞やジャパンCを制したエピファネイアと皐月賞馬サートゥルナーリアの母はオークス馬シーザリオです。
母の父も重要な要素として注目されます。例えば、日本ダービー馬ワグネリアン(父ディープインパクト)、有馬記念勝ち馬ブラストワンピース(父ハービンジャー)、マイルG1馬インディチャンプ(父ステイゴールド)、牝馬三冠馬デアリングタクト(父エピファネイア)、桜花賞馬ソダシ(父クロフネ)は、それぞれ種牡馬は異なりますが、母の父はすべてキングカメハメハという共通点があります。
競走馬の生産者は、過去の成功例を参考にしながら、種牡馬と繁殖牝馬、種牡馬と母の父との相性を研究し、より強い馬を生み出す努力を続けています。また、調教師や騎手は血統をもとに、競走馬の個性(性格、成長スピード、距離適性など)を推測することがあります。
ファンにとっても、競馬関係者にとっても、血統は無視できない重要な要素といえるでしょう。
データでわかる血統の特徴と重要性
ここでは、血統と競走成績の関係がわかるデータを紹介します。以下は、芝2000m以上およびダート1400m以下のレースにおける種牡馬成績トップ5(2020年・勝利数順)です。
〇芝2000m以上
種牡馬 | 1着 | 2着 | 3着 | 出走数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ディープインパクト | 88 | 92 | 72 | 702 | 12.5% | 25.6% | 35.9% |
ハーツクライ | 38 | 35 | 39 | 472 | 8.1% | 15.5% | 23.7% |
ルーラーシップ | 32 | 43 | 33 | 392 | 8.2% | 19.1% | 27.6% |
オルフェーヴル | 29 | 26 | 29 | 335 | 8.7% | 16.4% | 25.1% |
エピファネイア | 26 | 26 | 19 | 202 | 12.9% | 25.7% | 35.1% |
〇ダート1400m以下
種牡馬 | 1着 | 2着 | 3着 | 出走数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ヘニーヒューズ | 51 | 58 | 45 | 489 | 10.4% | 22.3% | 31.5% |
サウスヴィグラス | 50 | 34 | 38 | 454 | 11.0% | 18.5% | 26.9% |
ロードカナロア | 31 | 30 | 37 | 342 | 9.1% | 17.8% | 28.7% |
キンシャサノキセキ | 29 | 40 | 34 | 369 | 7.9% | 18.7% | 27.9% |
ゴールドアリュール | 26 | 24 | 27 | 338 | 7.7% | 14.8% | 22.8% |
このように、芝とダート、さらには距離適性によって種牡馬の顔ぶれはまったく異なります。その種牡馬の子が芝を得意としているのか、ダート向きなのか、中長距離に適性があるのか、短距離で力を発揮するのか――データを詳しく調べることで、予想にさらなる厚みを持たせることが可能です。
競馬界で重要な血統~大系統と小系統
1940年生まれのナスルーラは、英ダービー馬ネヴァーセイダイや米年度代表馬ナシュアなど、数々の名馬を輩出し、欧州と北米でリーディングサイアー(首位種牡馬)を獲得した大種牡馬です。さらに、ナスルーラの子ボールドルーラーからは米三冠馬セクレタリアトが生まれ、ボールドルーラーのひ孫には米三冠馬シアトルスルーがいます。
同じくナスルーラの子レッドゴッドからは仏G1馬ブラッシンググルームが生まれ、ブラッシンググルームの子には英二冠馬ナシュワンが、ナシュワンの子には凱旋門賞馬バゴがいます。そして、バゴの産駒には菊花賞馬ビッグウィークや、宝塚記念と有馬記念を制したクロノジェネシスがいます。
このように、ある種牡馬の子孫が次々と大レースを制覇することで、その血統が“系統”として認められることがあります。たとえば、ナスルーラ系(大系統)からボールドルーラー系やレッドゴッド系(小系統)が発展している、といったイメージです。
大系統や小系統の分類については、血統評論家や血統予想家によって多少見解が異なりますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介しましょう。
①ロイヤルチャージャー系~ヘイルトゥリーズン系~サンデーサイレンス系
種牡馬ロイヤルチャージャーから、ターントゥ~ヘイルトゥリーズン~ヘイロー~サンデーサイレンスへと受け継がれてきた系統です。
米二冠馬サンデーサイレンスは種牡馬として日本に輸入され、日本ダービーやジャパンカップを制したスペシャルウィーク、マイル王ダイワメジャー、三冠馬ディープインパクトといった数々の名馬を輩出しました。
スペシャルウィークの子にはG1を7勝したブエナビスタ、ダイワメジャーの子には香港マイルなどを制したアドマイヤマーズ、ディープインパクトの子には三冠馬コントレイルがいます。
この系統は、現在でも日本競馬界で非常に重要な位置を占める血統です。
②ネイティヴダンサー系~レイズアネイティヴ系~ミスタープロスペクター系
生涯成績22戦21勝を誇るネイティヴダンサーは、種牡馬としても英1000ギニー馬フラダンサーを輩出するなど成功を収めました。ネイティヴダンサーの子レイズアネイティヴは、アメリカで最優秀2歳牡馬に選ばれ、種牡馬としても数多くの名馬を送り出しました。
そのレイズアネイティヴの子ミスタープロスペクターは、大レースのタイトルこそないものの、種牡馬として大成功を収め、次々と重賞ウィナーを輩出。その中の1頭が仏2000ギニー馬キングマンボです。キングマンボの子には、NHKマイルCやジャパンCを制したエルコンドルパサー、NHKマイルCと日本ダービーを制したキングカメハメハがいます。さらにキングカメハメハの産駒には、牝馬三冠のアパパネやスプリント戦線で活躍したロードカナロアがいます。そして、ロードカナロアの娘が牝馬三冠馬アーモンドアイです。
このように、ネイティヴダンサーから続く系統は、現在の競馬界でも数々の名馬を生み出し、その血統の偉大さを示しています。
③ニアークティック系~ノーザンダンサー系~サドラーズウェルズ系ほか
カナダ年度代表馬ニアークティックの息子ノーザンダンサーは、ケンタッキーダービーなどを制し種牡馬入りすると、英三冠馬ニジンスキーや愛2000ギニー馬サドラーズウェルズなど、数々の名馬を輩出しました。特にサドラーズウェルズは、英愛リーディングサイアーの座を14回も獲得し、その産駒には英愛ダービー馬ガリレオや凱旋門賞馬モンジューがいるなど、欧州競馬で圧倒的な成功を収めました。
また、ノーザンダンサーの子ノーザンテーストは日本に輸入され、リーディングサイアーを10度獲得する偉業を成し遂げています。さらに、ノーザンダンサーの系統は現在も脈々と受け継がれており、ヴァイスリージェント系のクロフネやダンチヒ系のハービンジャーなどもG1馬を輩出しています。
このように、ノーザンダンサーを起点とする血統は、欧州や日本で大きな影響力を持ち続けています。
血統で予想するならJRA-VANは不可欠!
用されています)もいるため、すべての種牡馬の名前や特徴を覚えるのは現実的ではありません。そこで活用していただきたいのが JRA-VAN です。
JRA-VANでは種牡馬に関するデータも配信しており、とくにおすすめなのが JRA-VAN DataLab. の競馬情報データ分析ソフト 『TARGET frontier JV』 です。この『TARGET』にデータを取り込むことで、以下のような便利な機能を活用できます:
- コースごとの種牡馬成績を集計
- 系統ごとの成績を分析
- 種牡馬の産駒一覧や繁殖牝馬の産駒一覧を参照
- 競走馬の血統表を閲覧
先に紹介した芝2000m以上およびダート1400m以下のレースにおける種牡馬成績トップ5も『TARGET』で集計したデータであり、掲載した血統表も『TARGET』の画面からのものです。
JRA-VAN DataLab. と 『TARGET』 の組み合わせを活用して、ぜひ血統の奥深さに触れてみてください!